チャンドラーもマグラーもいるのが多々良島、(レッド)キングも……!
最近借りた本のリスト。
- 作者: パトリックマグラア,Patrick McGrath,宮脇孝雄
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 単行本
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- 作者: ウラジーミル・ソローキン,亀山郁夫
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1999/01/01
- メディア: 単行本
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ロシアの小説は物語としてきわめていいかげんでバランス感覚を欠いているなあ。物語の形式がしっかりと最適化された現代では、そういうことこそが文学作品に求められてしかるべきだと思います。
そこへいくとマグラア『失われた探険家』収録の短編は、どれもしっかりと組み立てられているように思える。「アーノルド・クロンベックの話」を例にあげるのがたぶんわかりやすいだろうが、他にも、「血と水」の書き出し、
まず、威厳のある英国の執事が、すこぶる大きなティー・ポットをかかげて歩いているところを想像していただきたい。
なんてのはどうだろうか。これから語りだすぞ! という堂々たる宣言ではないか。同じような、ある意味で工夫のない書き出しは、「オマリーとシュウォーツ」にも見られる。
「蠱惑の聖餐」も、ペレーヴィン『虫の生活』のような読みかたはつらいものがあるし、全編通して登場する“腐臭”というテーマも、有効に描かれているとは言いがたい(だって読んでてぜんぜんくさくないもん)。
さすがに表題作「失われた探険家」The Lost Explorerは精巧で、読み手がいつのまにか幻想に同一化してしまうようになっている。ここでは語りの工夫によって読み手が死んでしまうのだ。