オ53 食に淫する,Fantasy World ——腐しぎ世界——(¥300)
第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で13日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する
オ53 食に淫する,Fantasy World ——腐しぎ世界——(¥300)
食に淫する [第二十一回文学フリマ東京・評論|サブカルチャー] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
1993〜1996に生まれた10人の「腐女子」への個別インタヴューを収録.最近,溝口,BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす(2015)などを読んでいたので,これも興味深く読んだ.
【告知】腐女子に関するZINE『Fantasy Worldーー腐しぎ世界』を11月23日(月)の文学フリマにて尊厳さん(@songen_sugoi)のオ-53に置かせて頂く事になりました!ノット腐女子が腐女子にインタビューします。 pic.twitter.com/CfRZNiiOst
— しかげさい (@shikagesai) 2015, 10月 30
インタヴュイーはそれぞれ,相当に異なるものを求めてBLを読み,空想し,発言している.シアン(pp. 10-12)のように「エロはいらない」と言うひともいれば——そういえばこのシアンさんが古墳発掘(掘る)のバイトに勤しんでいるというくだりはできすぎている——,「関係性はどうでもいい」と言う透花(pp. 24-26),あるいは尊厳を奪うことで「ピンと来」て「受信」すると言う尊厳がない!肉便器bot(pp. 36-38).私じしんは,小さな空想に正のフィードバック・ループ(いや“性”の“腐”ィードバック・ループか?)がかかる環境が整ったことで,空想に空想を重ねてどんどん奇矯な方向に走ることができるようになった,という現象の一環としてこのインタヴュー集を見ていて,必ずしも「腐女子」のメンタリティに特有なものがあるとか,それが取り出されているとかというようには見ていないのだが,もちろんここで登場したひとびとの自称は重要だとは思う.
「NL」や「ホモ」呼ばわりといった,外部からの批判にもうちょっと目を通していたら出てこないような部分も(インタビュアー・インタビュイーともに)あって,そこはげんなりしなくもないのだが,みーる(pp. 33-34)がインタヴューの最後で表明しているような,BLと恋愛話とが区別できるかもしれず,したがってBL妄想に適用する倫理のなかには惚気話に適用する倫理とは違うものもあるだろう,というような示唆はおもしろい.