イ01 海外文学好き好きボーイズ,《エクス・リブリス》全レビュー(¥300)
第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で19日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する
イ01 海外文学好き好きボーイズ,《エクス・リブリス》全レビュー(¥300)
海外文学好き好きボーイズ [第二十一回文学フリマ東京・小説|海外文学・翻訳] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
「蔵書票」を意味する「EX LIBRIS」の名を冠した,白水社の世界現代文学の翻訳シリーズは,読書人のあいだではつとに有名です.こちらの同人本はそのシリーズの全作品をレビューしています!
ふつう我々は長編小説,つまり物語を理解しようとするとき,文字を1つずつ拾って読むというよりはむしろ,これまで培ってきた物語の原型を使って,飛ばし飛ばしに読んでいきます.しかし,現代文学のエッジィなところを理解しようとすると,その原型そのものへの挑戦を含んでいるためにその手抜きが通用しなかったり,あるいは海外作品であるために使っている原型や歴史的前提がちがっていて手抜きが通用しなかったりして,読むのにとまどうことが多々あるはずです.
そういう難しさがありつつも海外文学を読むのは,エキゾチックへのあこがれとかスノビッシュな対人戦略とかということもあるかもしれませんが,やはりどうせ読むなら世界でいちばんおもしろい作品を読みたいよね,という文学への愛がなせるわざだと思います.
じっさい,この同人本に含まれる評のなかには,このギャップに苦しんだとおぼしきものもあるのですが,それでもなにかしら,それぞれの作品を読まなければ出会えなかっただろう特別なものを引き出していて,蔵書に加えたいという気分をかきたててくれます.
私の既読は,ボラーニョ,通話(1997=2009,松本・訳)とキーガン,青い野を歩く(2007=2009,岩本・訳)しかなかったので(あとピランデッロの短編集は部分的に読んだことがあったかも),今回は新しい出会いにページをめくるごとにわくわくしていました.トーディ,イエメンで鮭釣りを(2007=2009,小竹・訳)は映画化した(砂漠でサーモン・フィッシング, 2011)作品ですよね.
気になった作品は,
- ジョーンズ,ミスター・ピップ(2006=2009,大友・訳).
- バルマセーダ,ブエノスアイレス食堂(2005=2011,柳原・訳).
- トビーン,ブルックリン(2009=2012,栩木・訳).映画化ずみだが日本未公開.
- モヤ,無分別(2004=2012,細野・訳).
- カリー・ジュニア,神は死んだ(2007=2013,藤井・訳).
- マシューズ,シガレット(1987=2013,木原・訳).
- ペーテル,女がいる(1995=2014,加藤・訳).
- クンズル,民のいない神(2012=2015,木原・訳).
書誌情報(とくに原著出版年)は改版の際ぜひのっけてほしい!