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イ01 海外文学好き好きボーイズ,文学の冒険全レビュー(¥400)

第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で21日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する

イ01 海外文学好き好きボーイズ,文学の冒険全レビュー(¥400)

海外文学好き好きボーイズ [第二十一回文学フリマ東京・小説|海外文学・翻訳] - 文学フリマWebカタログ+エントリー

 国書刊行会から発行されている文学の叢書シリーズ「文学の冒険」の全レヴュー本! すげえ! 大きな紙面で,作品の形式面(なぜその形式を採用する必要があったのか)や物語の構造(章ごとの対応),どの作品もそれなりの長さがあるゆえに目立ってしまう欠点までもしっかり指摘している.

 書評というのは,1つの本に,その本が提示する物語それじたいとはちがう一貫した説明を与えるという,やたらに困難な仕事なのだが,それが特にはっきりするのは,1つの本に複数の異なる物語が入っていて,しかもそれが偶然的な事情で寄せ集まっていることも多々ある,短編小説集の書評だろう.その点でよかったのは,マッコルラン,恋する潜水艦(1917=2001,大野・訳)(p. 10)の紹介.ほかに,書評単体の文体芸としておもしろいのは,滋賀県にある小さな湖の余呉湖を持ち出してきて小国ハイチとをからめた,立花&星埜,月光浴 ハイチ短編集(2003)の紹介(p. 52),ガルシア=マルケスとの比較のなかから「語り」という特徴を見いだした,アジェンデ,精霊たちの家(1982=1994,木村・訳)の紹介(p. 60)かな.あっ精霊たちの家池澤夏樹の世界文学全集にも入ってます.
 私の既読はロシアやラテンアメリカの諸作品とレム(完全な真空(1971),虚数(1981)),あとピンチョンとウィンターソンとぐらいなんだけど,読みたい作品はいくつもある.バース,レターズ(1979)とかバルガス=リョサフリアとシナリオライター(1977)とかの大家の作品もだけど,いちばん気になるのは,架空都市をつくってそこのSNSタイムライン的な語りを構築してしまったという,ケップフ,ふくろうの眼(1989)だ.