SF映画で学ぶインタフェースデザイン(2012=2014)はスゴ本
SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン
- 作者: Nathan Shedroff,Christopher Noessel,安藤幸央,赤羽太郎,飯塚重善,飯尾淳
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2014/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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SF映画に現れるさまざまなインタフェースが,作品内世界でどのように働いているかを分析し,それを通じて,現実のインタフェースのいろいろな特徴がわれわれにどんな影響を与えるかを確認したり,映像に現れるインタフェースが映画を見るときどんな感じを与えるかを確認したりする本.
SF映画のなかでだれかが何かを操作するとき,またそいつがその操作結果を受け取るとき,そこにはどんなやりかたがあるだろうか? 2010年ぐらいまでの100以上のSF映画を分析したこの本で取り上げられているのは,「機械式コントローラー」(レバーやダイヤルからボタン、そしてタッチ式へ*1)、「ビジュアルインタフェース」(ちょっとうるさすぎるぐらいの視覚効果がついているあれ,目の焦点あわせるの大変だよね,という話が載っていた),「立体投影」「ジェスチャー」「音のインタフェース」「脳インタフェース」「拡張現実」「擬人化」だ.
おもしろいのは,各インタフェースについて,それが現実に存在したらどういう使いづらさが生じるか,を検討し,それでもなお作品内世界で使われているとしたら,描かれていない技術によってその使いづらさが補われているのだろう,という形で,一歩深入りした考察をしているところ(この本ではこの手順を,「弁証論」という議論運びと呼んでいる).たとえば立体映像についていうと,小さな人形のような形の立体映像で目の前に相手のようすが浮かび上がり,それと話をする,という場合,相手方のほうにはどんな表示がされているだろうか? こちらが人形に話しかけるときには,人形を見下ろすようにして下を向く.相手方も同じインタフェースを使っているとしたら,相手も同様に下を向くことになり,結果,立体映像の相手方と目を合わせることができなくなってしまう!(p. 96) もしかすると,相手方には巨大なこちらの顔が投影されているのかもしれないし,そもそも立体映像は実物をそのまま映し出すものではなく,アイコン(アバター)のような互いのイメージ映像を表示しているだけなのかもしれない.
また,上とは別のセクションでは,こんどはいろいろな人間の活動にどんなインタフェースが利用されているか,という切り口から,「通信」「学び」「医療」「性的行為」が扱われている.「通信」で言うと,通信を切るためのボタンってSF映画にはあまり現れてこないらしい.こうなってしまう理由は特に分析されていなかったけど,私が思うに,SF映画のおはなしのなかでは,会話が終わるとなぜか通信も終わるか,もしくは経路の障害のせいで会話の途中で通信が切れちゃうか,あと場面転換が入っちゃうとか,そういうことが多いからかもしれないね.
この本を読んで現実のUIを作るのに役立つかというと,ふつうのUIを作るときの見落としをチェックするということには使えないけど,新しいUIの発想のたねはたーくさん入っている.たとえば3次元的な音(p. 127),これをGPSと組み合わせれば,探している場所まで行くにはどっちに歩けばいいか地図を見なくても感覚的にわかるかもしれない,とかね.想像するだけでワクワクしてきますよね!*2
それから,現実がSF映画に追いついている例もいくつか挙がっているけれど,手元ですぐ使えるものも例示されていたらいいなと思う.まあSiriなんかはそうか.私が勝手にあげておくと,「録音開始!」なんて命令しなくても会議の重要なところを録音しておいてくれるCogi(http://www.cogi.com/)はSF映画的だと思うし,「学び」で言えばPrezi(http://prezi.com/)は相当SFじみた視覚効果を手軽に提供してくれるプレゼンテーションツールだ.
あともっと重要なこととして,テレビゲームは実際に動かせるSF的UIとしてすばらしいものを提供してくれる.ゲーム機を持っていないひとむけには,Pinterestのページ(http://www.pinterest.com/pigmentokappa/ui-design-games-and-fiction/)とか,あとはFake User Interfaceで探すといろいろ見つかる.有名なFUI作家のMark Coleranのサイトはこちら(http://coleran.com/).