A18 カオスカオスブックス,青の思案(¥800)
第19回文学フリマ感想 Advent Calendar 2014 - Adventar,はじめました.この記事で17日め(時間操作ずみ).
私が文学フリマで買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(29評/30購入) - kugyoを埋葬する
A18 カオスカオスブックス,青の思案(¥800)
カオスカオスブックス [第十九回文学フリマ・小説|純文学] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
ポストモダン文学めいたさまざまな文章が収録された同人本.装丁がなかまで含めて非常に凝っており楽しい.
全体的に,小説家志望者の自己憐憫を扱った文章が多く,それを小説でやるのは厳しいなあ……と思ったのだけど,文章じたいの水準がなかなか高くて,pp. 18-20の語りはものすごく好き.たぶんこう,ひとが何らかの強い思い込みのもとでしゃべっているところを,その思い込みを自明視しながら語り手が描写していて,その描写につきあっているとそれが少しずつこっちにもわかってくる,みたいな文章が,私は好きなんだと思う.
出版業界の未来を考えたことはあるか——と男は言った——もうズブズブさ、どこもかしこも汚濁にまみれちまって機能不全なんだよ、癌なんだ、あんなものは切り捨てるべきなんだ! 世の中おかしいじゃないか、お偉方の未来なんて、俺にとっちゃ一ミリの価値もない、俺のような社会的弱者をもっと認めてゆくべきなんだよ、そうは思わないかね?
(後略)
言ってることはクズみたいなことなんだけど,この語り,同じことをくだくだ語るこの語りって、もちろんこんなふうに私たちがしゃべることなんてめったにないんだけど,必要最低限のことだけしゃべらせてそれでコミュニケーションやディスコミュニケーションを描いたことにしてしまうたいていの小説と比べれば,私の実感としてははるかにいきいきとして見えるのだ.
通販もしているそうなので,よろしければぜひ.