イ51 ケシュ ハモニウム,続往復書簡傑作選(¥500)
第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で10日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する
イ51 ケシュ ハモニウム,続往復書簡傑作選(¥500)
ケシュ ハモニウム [第二十一回文学フリマ東京・小説|短編・掌編・ショートショート] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
「続 往復書簡 傑作選」ケシュ ハモニウム@第二十一回文学フリマ東京 - 文学フリマWebカタログ+エントリー
前回お分けいただいた *にっぽんトワイライトばなし*も好きだったのだが(私の感想)この掌編集もとてもいい.うーん,こういうものが書けるようになりたいよね…….好きな作品を以下に.
“連弾”:読み始めてすぐに語り手のとっつきづらさが(ある種の感情移入のしやすさとともに)わかってくるのだが,物語の最後になってからまた初めを見返したときに語り手がいまいる時点がはっきりして,その残酷さをさらにあぶり出す.
“爪”:書き出し「そういえば、もう何年も爪を切っていないな。」が鋭い.そしてこの短さだからこそぎりぎりで成り立つオチがうまい.
“盗むなら風のように”:幻想的なイメージに溺れすぎないあっさりとした幕引き.*にっぽんトワイライトばなし*でも感じたことだが,物語というものをどこで切るべきかわかっているなあと感心した.これだけ自分のイメージをコントロールできたら気持ちいいだろうな…….
“ハネムーン”:これや“リンデルハルティン”にも見られるのだが,こういう,へんな病気を思いつく空想力はなんなのだろう! 現代日本人をふつうにやっていると得られない能力だと思うので,どこかに教養というか,なぞの病気こそが切実な恐怖であった時代とのつながりを感じる.
ドイツ軍侵攻を教師の視点から描いた“迷い子の流れ星”も,一見まじめに見えてよく効果のわからない叙述トリックが入っていたりなんかして,つまりどれもホラ話なのだが,定型的なツッコみがしづらいボケをかましてくる,そしてこちらのツッコみは無視して次の文が続いていく(そりゃそうだ,私がいくらツッコんでも文は照れ笑いしたりしない)文学特有のおかしみを存分に使っている,楽しい本.
【お知らせ】ケシュ ハモニウム新刊『続 往復書簡 傑作選』が完成!11月23日の文学フリマ(イ-51)で販売します!ぜひ会場に遊びにきて下さい。詳細はFBページにて https://t.co/JYZM5WTJgL #bunfree pic.twitter.com/aVSSh8HGF9
— ケシュ ハモニウム (@KesyuHamonium) 2015, 11月 16