イ22 あめあがり,あめあがり(¥500)
第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で14日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する
イ22 あめあがり,あめあがり(¥500)
あめあがり [第二十一回文学フリマ東京・小説|百合] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
降り落ちる雨粒の線を意識したとおぼしき縦長の組版が印象的な,小説|百合ジャンルの短編競作集.主催のあたみん,“ネクロフィリア”(p. 3-9)をはじめ,山階基,溺愛,三七十,萩原健吾,まりこねこの5名による9作品を収録.
こんな感じの本を出します。魅力的な方達への執筆のお願いと、紹介文を担当しました。もちろん、わたしも小説を寄稿してますよ。今回の本で、身体が複数化する感覚が強固になりました。「つくるための批評」のひとつの通過点を示せたと思います。 https://t.co/Mf56AIoYCv
— あたみ(ん)@3日目東ポ-04a (@vampirechan9) 2015, 11月 13
ポスト・アポカリプスの京都を歩み,少女の死体をかじってまわる「紅蓮」(色)と「シアン」(色,p. 6の「シャル」は「シアン」のことだよね?)とを描いた“ネクロフィリア”は,機龍警察の作中作を引用する(自爆条項のあれね)などの無節操さが,作中の崩壊した倫理観とマッチしている.
三七十,“渋谷”は,「マックフライポテトのMを/頭からかぶった/渋谷はなんだか/×××い街だ」という冒頭から,ポテトの「L」そして「X」と展開していくのがおもしろい(それだけに,「X」が組版で横倒しになっているのがちょっともったいない).
ほか,荻原健吾,“阿梅”は,表題にあるような中国の名前を持つ登場人物が日本語の文章のなかで息づくさまが物語内容とはべつに緊張感をもたらしているし(「倭人」が倭の国の民ということではなくじっさいに小さいひととして登場するので1行めからドキッとする),まりこねこ,“あめあがり”はストーカの行為がエスカレートしていき,さらに最後まで読んでから先頭に戻るともっとおかしなテキストとして読めるという技巧が楽曲的でたのしい.
通販もやっているみたいです.
あめあがり | あめあがり