あなたのkugyoを埋葬する

主に読書内容の整理のためのブログです。Amazon.co.jpアソシエイト。

借りたこれがテニスラケットだとして

昨年借りた本のリスト.

哲学
  • 心という難問 空間・身体・意味 は,ある対象の存在論的言明と、その対象を知覚するという言明とが、かなりごっちゃになっているような気がするのだが(隣の部屋にアイロンがあることを,推論によらず知覚できるのか?)、認知的侵入を極端な形に拡張して、素朴実在論を錯覚論法から守るという筋なのかな

心の哲学入門

心の哲学入門

自律の創成: 近代道徳哲学史 (叢書・ウニベルシタス)

自律の創成: 近代道徳哲学史 (叢書・ウニベルシタス)

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

ケアの倫理 (文庫クセジュ)

ケアの倫理 (文庫クセジュ)

人文・思想
  • 本を書く は訳がちょっと怪しい(たとえば,moralをなんでも道徳と訳すのはまずくて,教訓とか精神とかのように,倫理学者からすると相当ふわっとした意味で使うこともけっこうある)し,肝心の小説作りの心構えの面についての記述は,訳者解説が要領よくまとめてしまっているので読んでいてあまりおもしろくなかったが,後半のスタント・パイロットの話はかなりおもしろかった.
  • フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張) は,選択の自由としての自律性に重い価値をおく古典的な立場が,その限界のためにフェミニズムと対立してしまう事情について,見通しが得られる.ただ,「リベラリズムは…と主張する」みたいな言い回しは検証が難しいので(比喩だからね)注意しないとだな.
  • プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史アメリカの美容整形のはじまりをまとめているんだけど, 人はなぜ美容整形をするのか / 谷本奈穂 / 文化社会学 | SYNODOS -シノドス- でもちょっと触れられているとおりで,第1次世界大戦で(塹壕戦で顔を出すので)傷ついた兵士に対して行われた複顔術がもと,という単純な歴史ではないみたい.これはそもそも,美容整形を,いかがわしい流行ではなく医療の伝統に根ざしたもの,と認知してほしがった医師たちのがわの一面的な捉えかたであって,ほかにも梅毒(鼻が低くなる)への対応とか,第1回ミスコンとの時代的共鳴や,いかがわしいもうけ主義の「にせ医師」を排除しようとしてできた2つの学会とかいったドラマがあった.ギャングや犯罪と結びつけて語られたり(顔を変えるってやつ),医療訴訟されたりなどといった負の側面もありながら,公開手術などのもうけ主義的なPRを経て,大恐慌下では就職に有利として,当時はやった心理学における「第一印象」とか「劣等感」とかいったタームを背景に,容姿の重要性が叫ばれた.そうやって単なる再建手術ではない美容手術がアメリカの社会や宗教に受け入れられていくさまが描かれていて,読んでいて飽きない.
  • ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア は米国の手売り(郵送)ミニコミ雑誌を収集した研究でものすごくおもしろいし研究手法としても勉強になる.
  • 少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか は女性の「ホモソーシャル共同体」を注抜きで登場させるので面食らうが,これは“女性だけの共同体”というだけではやはりだめでホモソーシャリティを備えていることが重要なんだよね.つまり,魔法少女チームというのは,なかよい連中がたまたま全員女性であるのではなく,女性として共同体を作ってるものなのだ,というのが論旨なので.そのために用いられるのが,(男性共同体ならホモフォビアや強制異性愛などであるところ)マザーリングやケアなどフェミニニティへの「適度」な肯定や「戦略的」な利用であり,また,多様な構成員を共同体に加えるための統一感ある制服の導入だ,という読みは説得力あるし実証もおもしろい.
  • 狂気の科学―真面目な科学者たちの奇態な実験 p. 136によると,ポップコーン販促のサブリミナル“実験”を行ったと主張したジェームズ・ヴィカリさんは消息不明ということになっていて,それって不思議ミステリー⤴なんだが,調べると1977年没という情報も出てくる.
  • Sound Design  映画を響かせる「音」のつくり方 は,脇役ではない音響の奥深さが伝わる本! リヴァーブを変えれば空間の広さを自在に錯覚させられる.大音量を使わずとも,高低のゲシュタルトだけで,狙った音に注意をひける.ただ,やや記述が散漫なので,早見表みたいに使うのは難しそう.

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか

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狂気の科学―真面目な科学者たちの奇態な実験

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Sound Design  映画を響かせる「音」のつくり方

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言語が違えば、世界も違って見えるわけ

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信頼はなぜ裏切られるのか―無意識の科学が明かす真実

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ジプシー・ミュージックの真実―ロマ・フィールド・レポート

ジプシー・ミュージックの真実―ロマ・フィールド・レポート

「ジプシー収容所」の記憶―ロマ民族とホロコースト

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フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張)

フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張)

プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史

プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア

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クラリッサの凌辱―エクリチュール、セクシュアリティー、階級闘争

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少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

シングルのつなぐ縁:シングルの人類学2

シングルのつなぐ縁:シングルの人類学2

  • 作者: 椎野若菜,馬場淳,谷口陽子,新ヶ江章友,國弘暁子,小池郁子,田所聖志,八木祐子,田中雅一,岡田浩樹,村上薫,妙木忍,植村清加,花渕馨也
  • 出版社/メーカー: 人文書院
  • 発売日: 2014/04/14
  • メディア: 単行本
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本を書く

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ゴジラ論ノート―怪獣論の知識社会学

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モナドロジー・形而上学叙説 (中公クラシックス)

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洋服を着る近代: 帝国の思惑と民族の選択 (サピエンティア)

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コンセプチュアル・アート (岩波 世界の美術)

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美味しい料理の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)

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芸術SF・芸術ミステリー
  • アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) は,捜査役(マフィアの手先,刑事,功を焦る探偵社の新人)に応じて真相(実行犯の動機,計画者がそいつを実行犯として選んだ理由,計画者のそもそもの目的)を提示する作りがみごと.米南部が舞台のミステリーって終盤に嵐や洪水が多すぎない? 不満としてですねー,連続殺人犯が予告状送ってきて「ワシ,悪魔!今晩はジャズを演奏してない家庭をまわって人間ぶっころしちゃうもんね!」ってんで町中がジャズの渦に,っていうツカミなんだから,なぜジャズか? ってとこ,もっと芸術ミステリーにしてほしいよね(深水, 世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル) 2013 みたいになってもアレだが……こういうのでフェアプレーは難しい).
  • ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫) 所収の"音を取りのける男"(1962)は,音楽を圧縮して超音波にしても感情を喚起する効果は保存されるのがわかったせいで,すべての音楽が超音波化され,肉声を使うオペラ歌手が時代遅れになった未来の話なのだが,我々がその時代に置かれたらやはり肉声や可聴域音波のほうを好むかもしれない.最近だと J・G・バラード短編全集1 (時の声) にも”音響清掃”の題で悠宇録されています.

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)

世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)

ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫)

ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫)

SF
  • 宇宙探偵マグナス・リドルフ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー) に収録の“海への贈り物”(1955)もそうだが,ファーストコンタクトものは,コンタクトの手段確保に注目した言語SFの側面がある.これは言語の理論が登場したために,外挿法でSF化可能になった,という歴史的背景も関係ありそう(普遍文法は1957)だけど.
  • エンベディング (未来の文学) は,(乱暴に言えば)「の」が多い言語構造を,むりやり子どもに教えこんでいる言語学者が出てくるファーストコンタクトもの.最近読んだのだと,話しかけてくるブラックホールとのファーストコンタクトものもあった(ヴァーリイ 1977)
  • 都市 (ハヤカワ文庫 SF 205) 所収のシマック,“密集地”に火星人の哲学者が出てきて,地球の哲学とちがい順を追って発展してるというので,地球人に賞賛される.異なる哲学や生きかたがある,ってのをSFはよく(牧歌的に)扱うが,大陸系のように太陽系系哲学ってのはあるだろうか
  • ロックイン-統合捜査- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) は,やさぐれた頭に染みるSF刑事もの.大きな変化があった社会が(法案のせいで)さらに変わりゆく時期を描くと,状況の導入がスムーズでいいな.このあと*アンドロイドの夢の羊*(2013)も入手ずみなのでお楽しみに私!
  • ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫) は,RPGっぽいって感想を見たがほんとだなあ,主役と脇役との分離がはっきりしてる.「ヴィクトリア」の探索行はカッリージ,*ローマに消えた女たち*(2011.2014,清水・訳)をちょっと思い出すがこっちのがポップ.
  • ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504) は,へんてこな小説だ.ふつうなら最初に風呂敷を展開してあとで畳むから,まず「ゾーン」内の品々の紹介が先に来る構成になるだろうと思うのだが.それらの登場は終章まで待たされ,最初から出てくるのは「適量」「空罐」などせいぜい数種.

彼女がエスパーだったころ

彼女がエスパーだったころ

テキスト9 (Jコレクション)

テキスト9 (Jコレクション)

ゴースト・オブ・ユートピア (Jコレクション)

ゴースト・オブ・ユートピア (Jコレクション)

エンベディング (未来の文学)

エンベディング (未来の文学)

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ミステリー
  • 怪奇探偵リジー&クリスタル は1938年のLAが舞台のB級オカルトミステリー短編集.4話めの"軽はずみな旅行者"の一節が泣かせる,私こういうのに弱いね……つまり,大人の目から見たら(その大人には届かない)輝かしい未来に手が届こうとしているのに,それに気づいていない子どもを,大人が励ますってやつ(この励ましは呪いにもなるんだけどね!).
  • 心臓と左手―座間味くんの推理 (光文社文庫) はそれぞれ3万字弱の短編集で観点も統一されており(表の様相に対する真相,あるいはそのさらに裏)とても読みやすい.こうすっきりとはなかなか描けないもんだと思う.

挑戦者たち

挑戦者たち

殺しのメロディー (海外SFミステリー傑作選)

殺しのメロディー (海外SFミステリー傑作選)

絶対0度のなぞ (海外SFミステリー傑作選)

絶対0度のなぞ (海外SFミステリー傑作選)

怪奇探偵リジー&クリスタル

怪奇探偵リジー&クリスタル

その他小説
  • あなたに贈る×(キス)[新装版] はキスされると死ぬ! という設定だが最近まで知らなくて,恐々としながら読んだ,賭けに出たやつが1人もいなかったことになるのが不満.
  • 大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス) は解説で,「物語は次第に、その主観と外界とのずれや亀裂を発見することになる.それに気づきつつも,語り手はおのれの主観世界をさらに突き詰め…」という「自滅型一人称」が提唱されてるが,このパターンで面白く書くのは才能だよね!
  • エペペ はめちゃくちゃおもしろい.焦点人物の言語学者「ブダイ」が,国際学会への便をうっかり乗り違えて一切の意思疎通がきかない異国に迷いこむまで,わずかに1ページ半しかかからない.そのあとはずっとこの混雑した国での右往左往を楽しめるってワケよ.

レベル3 (異色作家短篇集)

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美について

美について

クライム・マシン (河出文庫)

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完本 黒衣伝説

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恋愛採集士

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古書収集家 (フィクションの楽しみ)

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あなたに贈る×(キス)[新装版]

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偽窓

偽窓

大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス)

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怪獣文学大全 (河出文庫)

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ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

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はるかな星 (ボラーニョ・コレクション)

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青い野を歩く (エクス・リブリス)

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エペペ

エペペ

夜更けのエントロピー (奇想コレクション)

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煙草 カリフォルニアウイルス

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その他

怪獣博士!  大伴昌司 ---「大図解」画報 (らんぷの本)

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ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

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脚本を書くための101の習慣 ──創作の神様との付き合い方

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幻獣と動物を描く

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フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た

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コーヒー「こつ」の科学―コーヒーを正しく知るために

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