あなたのkugyoを埋葬する

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フェミニスト形而上学について

 なんでフェミニズム形而上学じゃないのか? という疑問はあとで解消できると期待して,SEPのFeminist Metaphysics (Stanford Encyclopedia of Philosophy)(Sally Haslanger,2007)の項を訳しはじめました.
 冒頭だけ,どんなことが書いてあったのか見てみましょう.続きの訳の共有はGoogle グループでやることにします.みなさんどんどんメンバになってください.

[Metaphysics...]
  • 形而上学は現実の基本的構造についての研究である.
    • どんな形式の探究であれ前提とするように思える概念を考える.
      • 同一性,因果,実体,種などの概念.
    • もっとも一般的なレベルで言うと,何があるのか,を定義づけようとする.
      • 身体に加えて心があるのか?
      • ものは変化の前後で耐続するか?
      • 自由意志はあるのか,それともすべての行為はそれより前のできごとによって決定されているか?
  • さあそうすると,フェミニスト形而上学などどいうものがあるってのは奇妙ではなかろうか.
[However...]
  • しかしながら,フェミニストの理論家が問題にするのは,我々の世界理解の際の概念枠組が,(もし歪んでいるとして)どのように,男あるいは男性性に対して有利なように歪んでいるのか,という点であった.
    • 実体と本質とについてのアリストテレス的な枠組を採用することで,何か隠れてしまうものがあるか?
    • 物質的身体のうちに現れる非物質的魂についてのデカルト的な枠組を採用することで隠れてしまうものがあるか?
    • これらの枠組が見逃しているものは,女を抑圧したり低い評価を与えたりすることに関連しているだろうか?
  • フェミニストはまた,以下のような問題にも関心を持つ
    • 社会的現実の構造
    • 社会的世界と自然的世界との関係
    • なぜならば
      • 社会構造は自然であるとして正当化されることがよくある
      • 社会構造は必然的に何が自然的であるのかを支配する
    • フェミニストは自然に対するこうした参照が筋道の通ったものであるかどうかを問題にする.
  • これらは,社会的構築という概念や,特にジェンダの社会的構築という概念についての重要な論考に結びつく.

章立て

  • 1. 問題
  • 2. 社会的構築
    • 2.1 ideaまたはconceptの構築
    • 2.2 対象の構築
    • 2.3 構築と構成と
  • 3. 関係
  • 4. 二元論
  • 5. 結論

1. 問題

[Speaking...]
  • 非常に一般的に言うと,フェミニスト形而上学が問うているのは:
    • 何があるのかについての形而上学的主張は,(どのように)性差別に支えられているのか?
    • フェミニストが疑ったり是認したりすべき,特定の形而上学的前提や推論形式などはあるか?
  • こうした問いへの応答は,考えることについての概念の,再構築と批評とを提示してきた
    • 自己
    • 性と性的嗜好
    • 心と身体と
    • 自然
    • 本質
    • 同一性
  • フェミニストはまた,形而上学は探究の形式として筋蜜が通っているのか,ということも問題にし,認識論的問題を提起してきた.
    • 例えば,形而上学的探究が含意する本質主義的前提について.
    • こちらの,方法論的・認識論的問題には通りすがりに触れる程度にするつもりだ.
[To begin...]
  • 今世紀のフェミニズム形而上学概観をはじめるにあたって,ボーヴォワールの古典『第二の性』(1949)に触れておくのがいいだろう.
  • ボーヴォワールの有名な2つの主張は,深い形而上学的含意を持つように見える:
    • 「ひとは女に生まれるのではない.女になるのだ.」
      • こちらはジェンダが社会的に子地区されているという見解の標語として使われてきた
    • 「男は<主体>であり、<絶対者>である。つまり女は<他者>なのだ」
      • こちらは男性性に対立するものとして女性性の内容が構築されているという見解
      • 男性性は主体とか自己とかと見なされてもいる
  • ここで,フェミニスト形而上学に特徴的な,3つの絡み合った命題が明らかになる:
    • (i) ジェンダ(やその他のカテゴリー)の社会的構築
    • (ii) 自己(やその他のカテゴリー)の関係的本性
    • (iii) 二元論的に考えるという危険