オ08 マゾヒスティック・リリィ・ワークス,ダメ女子的映画読本(¥550)
第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で22日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する
オ08 マゾヒスティック・リリィ・ワークス,ダメ女子的映画読本(¥550)
マゾヒスティック・リリィ・ワークス [第二十一回文学フリマ東京・ノンフィクション|エッセイ・随筆] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
「ダメ女子的映画読本」マゾヒスティック・リリィ・ワークス@第二十一回文学フリマ東京 - 文学フリマWebカタログ+エントリー
50'sから00'sまで年代別に,日の当たらない側面を持ってしまっているようなそんなヒロインの登場する映画を15本以上紹介した本.「一気に読むと胃もたれするわよ!」ということですが,一気に読んでしまいました.
前回のダメ女子的映画のススメ。もよかった([私の感想)ので期待していたが,今回もとてもおもしろい.フェミニズム的映画評論でよく取り上げられる作品もきっちり押さえたうえで独自の視点を持ち,でも教養くささをまったく感じさせない親しみやすい評が特徴だ.フェミニストがよく取り上げる作品といえばホラーで,たとえば『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)評(山南,pp. 26-27)がそれにあたるし,教養ということではヌーヴェルバーグの意外な現代性を教えてくれる『彼女について私が知っている2、3の事柄』(1966)評(赤木杏,pp. 6-10)がそうだ.
いちばん好きなのは,『サスペリア』(1977)を論じた“ごめんなさい、私,"サスペリア"の悪役に共感せずにいられません!”(pp. 21-25)で,寄宿舎を舞台にした映画のあらすじ紹介が,ページをめくると評者の女子寮生活との照応になっていてびっくりするし,さらにその次のページではセットの狭さや古さゆえに現代の観客がおぼえてしまうコミカルさの強調がなされ,そして映画のラストに触れると同時に評も終わる,という流れが技巧的でいい.
次号が気になるという点では前回につづき大収穫! また楽しみにしています.