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カ11 Charlotte,よねざわほの部 部誌 読書会記録 よねどく(¥1000)

第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で23日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する

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Charlotte [第二十一回文学フリマ東京・評論|ミステリー] - 文学フリマWebカタログ+エントリー

 米澤穂信のミステリー小説から3作品,儚い羊たちの祝宴(2008),さよなら妖精(2004),ボトルネック(2006)を選んで,20人以上の大人数でチャット談義をやった記録を書き起こし掲載しています.

 唐突ですがここで白状しますと,私は2014年ぐらいまで,米澤穂信のことを米田淳一とごっちゃにしており,「へーあの警察もの(2000)書いてたひとが大転身だなあ」と思っておりました.ちゃんと読みはじめてからも,おもしろい話を細かい手つきで作るすぐれた作家なんだけど,オチのブラックさが肌に合わないようなそんなブラックさだなあ,ということで,道尾秀介に接するときのような距離をおいていたところがあります.小説で叙述をいじるといくらでも読者にいじわるできちゃうんで,その後味の悪さっていうのは,物語のなかでどうしようもない運命に巻き込まれてしまって登場人物といっしょに味わうものとは違うんですよね.
 米澤作品は叙述がちょっと不親切で(文章や構成がへたなのではなく情報のコントロールがうまい),結末も明白には示されないことが多く,また伏線が最後まで読むとすっきり回収されるというものでもないため,読み終わったあと独力では味わいきった感じがしないんですね.だからあとを引くというか,考察をはじめた結果として熱烈なファンになるひとがいるのはよくわかる.あとキャラクタのひねくれかたもほかにはない魅力的なものだし.で,この読書会では,そういうすっきりしないところをおおぜい集まって考えてみましょう,ということをやっています.
 ただ,せっかくこれだけのひとが集まったのだから,ちょっと書評を検索すれば見つかるていどの,つまり能力のある個人でもできるような筋の確認は最低限にして(たとえば“山荘秘聞”で「屋島」が持ち出したものはなんなのか,ボトルネックの章タイトル「昏い光」は作中の事物としてなにを指しているのか),細かい描写を人海戦術でしらみつぶしに見てくれたほうがおもしろくなったんじゃないかと思う.その点で,「椅子の専門誌」を読むというのがリラックスした家庭環境の示唆になっている,という指摘はすごくよかった.